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弔問

まっしぐらに歩いていく。

そんなばかな…という言葉が喉にせりあがる。

 

向こうから歩いてきた男性が、足をとめた。

「どこいくの?」

夫だった。

「Iちゃんが…お通夜って」

「だって、その格好…」

困惑した視線がわたしの上に落ちる。

「いい。 かまわない」

彼は言葉を継ごうとしてのみこむ。

わかった。 行っておいで。

 

「ちびたち、いるから…」

夫は頷いて歩きだす。

 

もう暗くなった道でその家が見つかったのは、

引っ越しがすんで落ち着いたら会おうねと約束していたからだった。

 

彼女の教えてくれた角でまがる。

この壁の家?

Iちゃん、あってる?

 

棺のまえでわたしはへたりこむ。

真新しい訪問着を逆さにかけられて Iちゃんはいた。

 

なんで…

たった半年ほどの間に

こんなことになっちゃうの。

 

視界の隅で、受話器をにぎりしめて話しているひとがいる。

さっき電話をくれたのはあの人だな。

ご主人だろうか。 ああそうか、写真でみたっけ。

 

Iちゃんは起きてこない。

約束なんかしなくても

街のあちこちで顔をあわせて、たんびおしゃべりした彼女が。

 

みんな忙しそうだね。

あなただけがひとりぼっち。

もしかして

おわかれの時間を とっといてくれた?

間に合ったかな、Iちゃん。

 

親戚のひとが着いた。

非のうちどころのない通夜の装い。

とんでもない逆恨みをしそうになる。

 

席を立つ。

場違いな客は帰るよ。

 

会っていたときに交わした言葉が

さよならへの挨拶。

 

Iちゃん。

またね。

 

だけど

M中の同窓会は もう行かない。

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ばぶるす」カテゴリの記事

コメント

あちこちからご心配の声をかけていただきすみません。

もう十五年ほど前になります。
思えば、たてつづけにふたりの友人を送ったくらい年でした。

書いたあとで、遺されたお嬢さんどちらかの成人式だったかもと。
おかあさんのことを伝えてあげようと思ったのに、いまだに果たせていません。
でも、出会ったらわかる気がする。
それまでぼけずにいなくちゃね。

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